JUKE BOX #007

松原 浩太 さん
都内私立大学入学後、2年次に慶應義塾大学へ編入。その後大学のプログラムによりフランスに留学。フランス工学系大学院修了。慶應義塾大学大学院 理工学研究科修了。現在は政府系開発援助機関に勤務。


Q1.今のお仕事について教えてください。
現在は政府系開発援助機関で働いており、開発途上国相手に開発金融業務をしています。相手国を支援すると共に、日本企業と相手国の結びつきも強めるような活動です。学生時代に途上国経験はほとんどありませんでしたが、留学経験を活かし中東諸国の担当をしています。


Q2.学生時代のことについても教えていただけますか。
都内私立大学に入学して1年目は建築を学び、2年次で慶應義塾大学に編入し機械工学や電気工学を学び、更には3年目~4年目でフランスに留学して機械工学から経営工学まで学ぶという、非常に紆余曲折あった学部時代でした。
フランスでは、語学や人種・文化の壁にぶつかりながら、落第しまいと必死に勉強する毎日でした。また、飛行機で隣に座った研究所の先生と意気投合したのがきっかけで、留学中にフィンランドの研究所でも半年間働きました。その後は、インドネシアを放浪したりシンガポールのIT企業で半年間働いたりしてから、慶應義塾の大学院に戻りました。
大学院で所属したのは物性物理の研究室で、半導体関連の研究をしました。今までの学んだ内容と異なったことに加え、日本の暗黙のルールに自分を再位置付けする中で、正直何がしたいのか自分でも分からず非常にモヤモヤしていました。大学院は、ギリギリ卒業させてもらったという状態でしたが、研究室の先生や友人からは学問への姿勢だけでなく多くのことを学ばせてもらい感謝しています。
卒業後は昔1ヶ月ほどインドネシアに滞在した経験だけで途上国に行きたいなと、理由もなく考えるようになりました。そして、そのまま大学院の専門とは一切関係のない現在の会社に就職しました。


Q3.非常に変化に富んだ学生時代ですね。これまで「新しいことへの挑戦」や「変化」にためらいを感じたことはないのですか。
もちろんためらいは感じます。今では、徐々に面白そうなことに対しては比較的ためらい無く選択できるようになりましたが、昔からそうだったわけではなく、初めの変化点となる慶應義塾大学編入はかなり悩みました。大学入学に関しては、建築を学ぶ兄の影響を受けて進路選択しましたが、デザイン・哲学・歴史のような客観的基準で測れないものを重視する学問がどうも好きになれず、次第に建築を続けることに違和感を覚えるようになったのが編入を考え始めたきっかけです。

そこで進路を再考し始めたのですが、他の学校へ移る選択肢なんて最初は全くありませんでした。というのも自分で「敷かれたレールから外れたらいけない」と無意識に思い込んでいたのです。当初は、現状に違和感を持ちながらも、変化することに対して不安があり、自分が今までで一番悩んだ時期でした。


Q4.では、何がきっかけで学生生活がそんなに変わったのでしょうか。
ずっと悩んだものの、とにかく「新しい環境」に行きたいと思いました。そしたら、慶應義塾大学が2年次から編入可能だったので、試しに受験してみたところ、合格を頂きました。正直受かると思っていなかったので、合格通知を頂いた後どうするか迷ったのですが、「“受験した”という、その行動こそが自分の意志なのだろう」と思い至り、編入を決意しました。

それが自分にとっての大きな起点となりました。一旦自分の進路を変えたことで、「1回リセットしたのだから、何回リセットしても一緒だろう」と思うようになってしまって(笑)。それからは面白そうな道を積極的に選ぶようになりました。やっぱり、頭で考えるとためらいが出てくるので、最後は直感で決めることも重要な気がします。


Q5.これまでの選択に満足していますか。
人と異なる道を選ぶということは苦しいことも多かったですが、できる限り過去を肯定し後悔しないように今を生きています。現在のいわゆるサラリーマン生活も居心地が良いです。その一方で、居心地の良さの中で感覚が鈍化していき、給料や世間体などのサラリーマンの物差しだけで物事を見るようにはなりたくないなとも感じます。定年までのスケジュールをこなす以上に、自分自身の人生を送りたいという思いもあります。今の仕事は非常に面白くてやりがいのあるものですが、もし週末まであと何日だとカウントダウンし、週末だけを楽しみにするようになったら将来について考え直そうと思っています。


Q6.最後に、学生へのコメントをお願いします!
ただでさえ、自分のことで頭がいっぱいなのにメッセージなんて恐縮ですが、あるとすれば、進路や職業選択の悩みは学生だけのものではないと言いたいです。学生だけでなく、何か目標を持って頑張ろうとしている人など全ての人が進路、大きく言えば人生について悩んでいるのだと思います。悩まないということは悟った(諦めた)と同義であるなら、そこにたどり着くまでは悩むのが健全なのかもしれません。

あと、学生時代にやっておいて良かった経験は、ヨーロッパへ行ったことです。日本で留学と言うとアメリカが主流ですが、同じ海外でもヨーロッパは長い歴史に基づいた価値観が形成されています。向こうで“慌ただしくない生活”を送るのは良かったですよ。

最後に、僕は、誰でもできるけど誰もしなかったことをやるような生き方に憧れます。生き方の答えは自分の中にあるのだと思いますが、それを見つけるためにもっといろいろ経験することが必要かもしれません。と、そのように自分に言い聞かせるとともに、これが学生にとって何かのメッセージとなればと思います。


 
 
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